現在、1型糖尿病の根治を目指して、徳島大学病院にて治験の準備が行われているのをご存じでしょうか?
消化器・移植外科の池本哲也医師が治験の準備を進めており、今年の夏ごろから第1例目の患者さんへの投与を目指しているとのことです。
「1型糖尿病の根治」!まさに希望の光です!
1型糖尿病の方、家族にとって、これほど嬉しいニュースはありません!
今回は、その徳島大学病院の池本哲也医師の講演が行われた「第40回AWADM.com(アワコム)」に参加しましたので、私なりに感想や研究の現状をまとめたいと思います!
第40回AWADM.com(アワコム)プログラム
今回は、2025年5月10日に徳島大学にて講演会が行われました。私たちはzoomで参加しました。
今回が初めての参加でしたが、会場の雰囲気も和やかで、現地では講演会の後に懇親会なども行われたようで、結構アットホームな印象でした。

定期的に開催されているようなので、子どもが大きくなったら旅行もかねてぜひ現地に行ってみたいですね。
講演①「テクノロジーで広がる選択肢 〜1型糖尿病におけるインスリンポンプと CGM の進歩〜」
こちらの講義では、ポンプとCGMの進化、新機能の追加によって、血糖コントロールがより楽に、より正確にできるようになっていて、さらに今後はより精度が高くなっていくだろうといった内容でした。
我が子が治療を始めた時には、すでにCGMがありましたので常時の血糖値モニタが当たり前でしたが、数十年前までは無かったことを考えると、改めてテクノロジーの進歩に感謝です。
TIR(time in range)70%で合併症リスク低減!!
糖尿病の方は恐らく定期受診でTIR(time in range)についても、担当医から指導されているかと思います。
TIR(time in range)は、糖尿病患者の方が目指す基準となっている、血糖値70-180mg/dLの範囲内にある時間の割合を示す値です。
このTIRが70%の時、HbA1cは大体7%であるそうです。
このHbA1c:7%というのが、合併症のリスクが大きく増加する基準となっているため、TIR:70%を目指すことが第一の目標となってくるそうです!
TIRよりも厳しいTITR(time in tight range)でのコントロールも目指す
またTITR(time in tight range)という指標もあります。
TIRが70-180mg/dLに対し、TITRは70-140mg/dLと血糖値の幅が狭くなっていて、より健常者の血糖正常範囲(70-120mg/dL)に近い目標となっています。
最近のポンプのオートモードや低/高グルコースによる自動一時停止/再開の機能を駆使すれば、このTITRの範囲も目指していけるのではないかと考えられているそうです。
70-140mg/dLの間に血糖値が収まるようになれば、合併症のリスクも低くなるので、期待です。
グルコース+ケトンも常時モニタする時代へ!
現在のCGMの様にグルコース値だけではなく、ケトン体も測定できないかと業界では考えられているそうです。
もし、ケトン体が測定可能となれば、①ケトアシドーシスの予測と予防、②糖を尿として排出するSGLT2阻害薬という薬を安全に使用することが可能となり、血糖コントロールの手法が広がるとのことです。
SGLT2阻害薬とは腎臓に作用して、尿糖として糖を排出でき、血糖値を下げることができる薬剤です。ただ、使用することで、ケトアシドーシスのリスクがあります。ケトン体もモニタリングできれば、安全に使用できるようになるとのことです。
糖尿病の発症を遅らせる研究も!
実は、糖尿病にはステージがあるということをご存じでしょうか?

ただ、症状が現れるのが末期(ステージ3)なので、発覚後にはすでに、ほぼほぼインスリンが出ていなく、手遅れとなっているも多いとのことです。
これを早期に発見できれば、最大で数年程度は発症を遅らせることもできる様です!
現在2歳の我が子は食べムラ等が多く、血糖コントロールには苦しんでいます。
低血糖になった時なども、スムーズにご飯やお菓子を食べてくれず、親子ともにストレスを感じています。
もし、数年でも、数カ月でも発症が遅くなれば、子どもも自分で食べてくれたり、低血糖に気付いて補食したり、意思疎通ができるので少しは血糖コントロールもしやすかったのかと思います。
是非、このような研究も進めて少しでも小さい子供の発症を遅らせることが出来れば助かりますね。
ちなみに、IDDMのHPにもこの研究についての記載がありましたので、URLを貼っておきます。
血糖コントロールの手法や可能性が広がることで、合併症リスクも低減!
血糖コントロールの手法が増えたり、手軽さ、正確性が向上するのは嬉しいですよね。
結局は、血糖コントロールさえ上手く出来れば、合併症を進行、発症させないことにつながります。
Medtronicのポンプでは、オートモードにより目標血糖値を目指してベーサルの自動ON/OFF、ボーラスの自動投入等をしてくれます。
糖尿病仲間の方に話を聞いていると、この「オートモード」なかなか使える機能だそうですが、対象が7歳以上となっているため、現在2歳の我が子には使用していません。
年齢制限なく使用出来るようになれば、親子ともに負担が減って生活の質も上がりますので、こういった研究も進むことを期待しています!
講演②「再生医療が拓く新たな1型糖尿病治療の可能性 -徳島から始まる自己細胞移植治療-」
こちらの講義では、いよいよ1型糖尿病の根治に関する研究成果と今後の治験等を含めた展望に関する内容でした。
患者自身の脂肪から膵島を作る!
正直、内容が複雑で理解半分かも知れませんが、治療の仕組みを大雑把に言うと「患者の皮下脂肪から採取した幹細胞からβ細胞を作り腎被膜下や腸間膜内に移植する」ということです。
この人工β細胞が血糖濃度に応じてインスリンを分泌する能力があり、そのまま膵臓のような働きをします。
実際、マウスと豚で実験をし結果、有効性が確認できて、マウスに至っては1回の移植で455日間血糖血が正常にコントロールできたという結果も出ました。
様々な懸念、障害、リスクが減る!
いままでは、根治となると膵臓移植が考えられていました。
しかし、膵臓移植となるとドナーの状況に合わせて急な手術が決定したり、過剰免疫抑制剤の副作用、胎児、子どもへの影響等が懸念されていました。
この研究が成功すれば、自己細胞を使用するので免疫抑制剤も不要。
自身の都合に合わせて手術も実施できて、進学、就職、結婚、旅行等のライフイベントと手術が重なることもない!
さらに、今は手術での細胞移植が前提ですが、ポンプの様にリザーバー等で細胞を注入と手術さえ不要になる可能性も考えられるとのこと。
講義を聞いている最中、正直もう根治出来ると確信して、ワクワクしました!
そして、いよいよ1型糖尿病は根治できるのか!?
マウスと大型動物(豚)での実験結果を聞いていた限り「根治できる!」と考えてしまいますが、治験結果が出るのが約3年後、実用化の目標は2030年頃となっています。
まだまだ、先かも知れませんが、我が子が成人もしくは手術可能な年齢になる頃には、より手軽に、より低リスクで、根治できることを想像してしまいます。
順調に治験が進むことを願っています。
まとめ!まさに希望の光!
恐らく、数十年昔に比べればテクノロジーの発達により血糖コントロールも簡単に、正確になっているかと思います。
現時点でも十分恵まれているとは思いますが、3日に1回のポンプ交換、7日に1回のCGMセンサー交換、毎食のカーボカウント等々、健常者に比べてまだまだハンディキャップが大きいとも感じています。
特に、我が子はまだ2歳でポンプやCGMセンサーの着けられる場所も少なく、傷跡やシールかぶれの跡を見ると、心苦しくなります。
この研究が成功して、こうしたハンディキャップから解放され、普通の子と同じように何も気にせず部活、勉強、遊び、外食、食べ歩き、、、好きなことに全力で集中できるような世界が来ることを願っています!
余談:おしゃべりタイムは患者同士の交流
講義の後には「おしゃべりタイム」というものが設けられていて、患者同士で交流ができるそうです。
なお、zoomでも参加可能で、何人かのグループに分けて交流させて頂けるようでした。
私たちは、カメラとマイクが無いため、講義が終わった後、zoomを抜けてしまいましたが・・・
次回は、ぜひ、現地で参加したいですね!
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